米国上場って国内上場と何が違うの?
まず、上場というと、国内で上場する場合には、東京証券取引所のような株式市場に自社の株式を公開することになります。この「公開」とは、ざっくり言ってしまえば、みんなが、その会社の株式を、証券会社を通して、1株850円で売ったり、買ったりできるようになる、ということです。
米国上場も全く同じ発想です。ただ、国内上場とは違う特殊な点として、株式そのものが公開されるわけではありません。株式と同じ機能をもつ証券を、上場しようとする会社でないアメリカの銀行が発行して、その銀行が発行した証券がアメリカの株式市場に公開されることになります。
アメリカの銀行が発行する証券?
この証券のことをADRやADSといいます。それぞれ、American Depositary Receipt 、 American Depositary Shareの略です。厳密には両者には違いがあるのですが、本稿で説明するにあたってその違いは大きな意味はありませんので、以下、ADRといいます。
ADRが発行されるってどういう仕組みなの?
日本企業が、アメリカの証券取引所で取引されるためには、通常、このADRを通して上場させる必要があります。
具体的には、アメリカ国外で設立された会社(例えば、日本の株式会社)が発行する普通株式をアメリカ国内で営業する銀行に預け、その銀行が預かった普通株式を裏付けとして、証券を発行します。その証券をADRといいます。そして、このADRを発行する銀行のことを預託銀行といいます。
このADRを保有する投資家は、その裏付けとされている普通株式の基本的な権利、つまり、議決権や配当を受ける権利を享受することができます。なお、ADRは、日本の金商法上、2条1項20号の有価証券に該当します。
ADRの割合?
この裏付けとなる普通株式とADRの割合は、必ずしも1:1である必要はありません。
例えば、日本で設立されたA株式会社の普通株式10株を裏付けとして、アメリカで営業するB預託銀行がその10株と引き換えに1 ADRを発行する場合、1 ADRの保有者は、A社普通株式10株の保有者と基本的には同等の立場として権利を行使できます。
普通株式とADRの割合をどうするかは、その会社の資本政策次第で自由に設計可能です。
ADR以外には?
このように、ADRをアメリカの証券市場に上場させることで、アメリカ国外の企業がアメリカで上場することができるようになります。
米国上場には、この他にも、アメリカに法人を設立して、その株式を上場するやり方や、最近注目を浴びた買収目的のビークルを設立してそれを上場させるSPAC上場というやり方もあります。
これらは既にいろんな所で解説されていますので、詳細はそちらに委ねたいと思います。