米国上場プロジェクトの関係者

米国上場プロジェクトには誰が関与?

これまでの投稿では、米国上場とは何?日本での上場とは何が違うの?という点から紹介させて頂きました。
本投稿では、いざ、米国上場しよう!と決めたときに、どのような関係者がプロジェクトチームとして関与してくるのかを紹介したいと思います。

米国上場で肝となる関係者としては下記が挙げられます。

  • 発行体(Issuer)

  • 引受証券会社(Underwriter)

  • 米国監査法人(US Auditor)

  • 預託銀行(Depositary Bank)

  • 証券取引所(Stock Exchange)

  • 発行体のカウンセル弁護士(Issuer Counsel)

  • 引受証券会社のカウンセル弁護士(Underwriter Counsel)

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これに加えて、上場直前においては、以下の関係者も重要な役割を担います。

  • カストディアン(Custodian)

  • 印刷会社(Printer)

  • 株主名簿管理人(Transfer Agent)

  • DTC (Depository Trust Company)

以下では、各関係者について、触れていきたいと思います。

発行体(Issuer)

上場プロジェクトにおける主人公です。

CFOをリーダーとして、財務会計部門、事業部門、IR部門、管理部門を中心にプロジェクトチームが組成されるのが多数だと思います。

引受証券会社(Underwriter)

上場にあたり発行体のADRの引受を行い、アメリカ国内の投資家への販売を担当するアメリカの投資銀行です。これは、日本でも同じですが、どの投資銀行を引受証券会社として選任するかが、目標とする調達額を達成できるか、株価形成がうまくいくかに影響を与え、上場成功のカギともいえます。

別の投稿で紹介するForm F-1の作成もこの引受証券会社と一緒に行います。

米国監査法人(US Auditor)

こちらも日本と同じイメージでいいと思うのですが、財務諸表監査(+内部統制監査)を担当する監査法人です。当然、米国における監査資格がある監査法人を選任する必要があります。

この監査に耐えうるか(コンフォートレターを発行してもらえるか)も上場手続の肝となります。

預託銀行(Depositary Bank)

前の投稿でも紹介したとおり、発行体の普通株式の預託を受け、ADRを発行する銀行です。ファイリングからクロージングまで、クロージング後においても末永くお付き合いする会社です。

なお、ADR上場後、ADRの裏付けとなる普通株式の株主名簿上の株主は、この預託銀行となります。実質株主名簿については米国の実務も含めて理解が必要になります。これはまた後日お話しできればと思います。

証券取引所(Stock Exchange)

もはやいわずもがなと思います。ADRを上場させ、投資家に広く取引してもらう市場です。米国上場にあたっては、ニューヨーク証券取引所(NYSE)かナスダック証券取引所(NASDAQ)のどちらかへの取引所を検討することになります。

各証券取引所の特徴としては、以下のようになります。イメージ通りといえばその通りなのですが、親交のある米国弁護士も同じ意見でした。

  • NYSEは、伝統産業、成熟企業が上場

  • NASDAQは、新興、テック系の会社が上場

上場基準などについてはまた日を改めて触れていきたいなと思います。

発行体のカウンセル(Issuer Counsel)

通常、発行体には、カウンセルとして米国法弁護士と日本法弁護士の双方がつきます。米国上場では、発行体のカウンセルとしての弁護士が重要な役割を担います。というのも、有価証券届出書に相当するForm F-1の作成、そのバージョン管理、関係者との調整、SECへの提出、SECや上場予定の証券取引所とのやり取りなど上場手続きのほぼ全てをリードするのが、この発行体のカウンセルだからです。詳細はまた別の投稿でお話します。

引受証券会社のカウンセル(Underwriter Counsel)

米国法弁護士がカウンセルに就任します。引受証券会社は、その引受審査にあたり、発行体に対して調査を行うので、その際、引受証券会社とともに法務部門をこの米国法弁護士がリードすることとなります。発行体が日本法準拠の会社である以上、通常は、日本法弁護士も選任されることとなります。

カストディアン(Custodian)

発行体の株主である預託銀行は、発行体からみたときに非居住者です。そのため、株主としての権利行使事務のために日本居住者が選任され、その日本居住者に対して全権委任します。その日本居住者が、カストディアンです。通常、日本国内の金融機関が選任されます。

印刷会社(Printer)

SECへのファイリングは、EDGARという、日本でいうところのEDINETに相当するシステムを通して行われます。このEDGARのフォーマッティングや提出事務を行うのが、開示専門の印刷会社です。度々触れるForm F-1のアップデートの回覧などはこの会社が行うこととなります。

株主名簿管理人(Transfer Agent)

日本で選任される会社法上の株主名簿管理人です。米国上場のクロージング事務にあたって、株主名簿の異動があるために関与することとなります。

DTC (Depository Trust Company)

日本のほふりに相当する機関です。有価証券の電子化、清算・証券保管業務を行っています。上場のクロージング直前にADRのDTC登録手続などで関与します。

以上、関係者について触れていきました。今後、具体的なスケジュールや段取りに触れていく予定なので、必要に応じて、深堀りしていきたいなと思います。